カー用品の持ち込み取り付けで曖昧になる「責任の所在」
「同じ商品なら、ネットで安く買って取り付けだけプロに頼めばいい」
そう考えて持ち込み施工を選ぶ方は多いと思います。
でも、実際に取り付けてもらった後、もし不具合が起きたら…?
- 音が出ない
- 画面が映らない
- エアバッグ警告灯が点灯する
「これは誰の責任でしょうか?」
この問いに、実は明確な答えは存在しません。
「いやいや…、当然施工店でしょ。」
と思っている方も多いかもしれませんが、実際にはこうなりがちです。
これ実は、どちらも間違っていないし、どちらも正しくもないという状態です。
持ち込み施工における最大の問題は、この状態が起こりうること。
売主と施工主が分かれている以上、責任の所在が曖昧になることなんです。
まずはおさらい|通常の取り付けにおける責任の範囲
持ち込み施工の問題を理解するために、まずは「普通にディーラーやカー用品店で取り付けてもらう場合」の責任範囲を整理します。
例えば、あなたがディーラーに「ドライブレコーダーを取り付けてほしい」と依頼したとします。
この場合、ディーラーは次のような責任を負います。
- 部品選定: あなたのお車に適合する製品を選ぶ
- 適合確認: 車種・年式・グレードに基づき、取り付け可能か確認する
- 仕入れ: 信頼できるルートから正規品を調達する
- 取り付け: 正しい方法で取り付け、動作確認する
- 初期不良対応: 部品に問題があれば、ディーラーが交換・対応する
- 施工不良対応: 取り付けに問題があれば、ディーラーが再施工する
- 保証: 部品・施工の両方について保証を提供する
- アフターフォロー: 不具合が出た場合、窓口はディーラー一本で完結
つまり、すべての責任がディーラー(またはカー用品店)にあるんです。
言い換えれば、あなたに責任が向かってくることは、「ない」ということです。
だから安心して「お任せ」できます。
トラブルが起きても、連絡する窓口は一つ。 「部品の問題か、取り付けの問題か」を判断するのもお店の仕事です。
これが、通常の取り付けにおける「責任の所在が明確な状態」です。
持ち込み施工で曖昧になる責任
では、持ち込み施工ではどうなるでしょうか。
部品選定の責任は誰が?
あなたがネットでドライブレコーダーを購入し、施工店に持ち込んだとします。
「この製品が、あなたのお車に適合するか」を確認したのは誰でしょうか?
- ネット通販サイト? → 「適合確認はお客様ご自身でお願いします」と書いてあるだけ
- 施工店? → 「持ち込まれたものなので、適合は確認していません」
- あなた? → 「適合表を見たけど、本当に合うかは分からない」
責任の境界線が、すでに見えにくくなっています。
そもそも、取り付けられなかったら?
取り付け当日、施工店でこう言われたとします。
「お持ち込みいただいた製品、このお車には取り付けできません」
- 予約していた作業時間と工賃は?
- 開封済みの部品は、返品できる?
- 取り付けるための追加部品や加工費用は、誰が負担する?
部品選定の確認が曖昧なまま進むと、取り付けが始まる前から、行き場のない費用が発生します。
取り付け後に不具合が出た。原因は?
取り付け後、ドライブレコーダーが動かなかったとします。
原因は何でしょうか。
- 部品の初期不良?
- 施工店の取り付けミス?
- そもそもお車に適合していなかった?
- 他の車載機器との相性問題?
これを、あなたは判断できますか。
施工店は「部品の問題だと思います」と言うかもしれません。
ネット通販の販売店は「取り付けに問題があるのでは?」と言うかもしれません。
どちらが正しいのか、あなたには分かりません…。
誰に連絡すればいいのか?
不具合が起きたとき、あなたは次のような状況に置かれます。
- 施工店に連絡 → 「部品の問題では?販売店に確認してください」
- 販売店に連絡 → 「取り付けの問題では?施工店に確認してください」
- 再び施工店に連絡 → 「原因特定したいんですね。それには診断費用がかかります」
窓口が複数に分かれ、たらい回しになる可能性があります。
そして、原因を特定するための診断費用や再施工費用は、誰が負担するのでしょうか?
ここで一度、状況を俯瞰してみましょう。
責任の所在を明確にする責任は、あなたにある
ここからは、あえて厳しいことをお伝えします。
ただそれは、「安いから」という理由だけで持ち込み施工という選択を行い、いざという時に後悔してほしくないからです。
図で見たとおり、2つの契約の両方に入っているのは、あなただけです。売主と施工店の間には、何の契約もありません。
だから「どちらの問題か」を確定させる役は、あなた以外の誰にも回ってきません。
では、切り分けた結果「持ち込んだ部品側の問題」だったら、どうなるのでしょうか。「プロなんだから、取り付ける前に気づいてくれるでしょ」と言いたくなるところですが、実はここも法律で決まっています。
民法では、注文者が持ち込んだ材料が原因の不具合について、請負人(=施工店)に責任は問えないと定められています(民法636条)。部品を持ち込んだ時点で、あなたは「部品の仕入れ業者」と同じ立場。部品側はあなたの持ち場、というわけです。
ただし、この条文には続きがあります。施工店が「この部品は問題がある」と気づいていながら黙っていた場合は、施工店にも責任がある、という「ただし書き」です。
そして、実務で本当に難しいのが、この「ただし書き」の部分です。
実務的には、証明が難しい
たとえば、不具合が起きたとき、
- プロは本当に気づいていたのか
- 気づくべきだったのか
- それとも取り付けてみないと分からなかったのか
これを後から証明するのは、非常に難しいです。
ケーススタディ|こんなとき、誰の責任?
では、実際にどんなトラブルが起きるのか、具体例を見てみましょう。
ケースA:適合しなかった
ネットで購入したカーナビが、車種には適合していたが、グレードによって配線が異なり、そのままでは取り付けられなかった。
誰の責任?
- 適合表を確認したあなた?
- 「適合します」と表示したネット通販サイト?
- 事前に確認しなかった施工店?
- それとも、施工店が「このグレードは配線が違う」と引き受ける前に気づくべきだったのか?(実質不可能)
→ 明確な答えは存在しません。
結果:追加の配線加工が必要になり、工賃が追加で発生。部品は返品できず、自己負担。
ケースB:取り付け3ヶ月後にナビが故障
取り付けから3ヶ月後、カーナビが突然動かなくなった。
原因は?
- 部品の初期不良?(でも3ヶ月後だから初期不良と言えるか微妙)
- 取り付け時の配線ミス?
- 車両側の電源トラブル?
→ 断定できません。
販売店は「初期不良期間は過ぎています」と言い、 施工店は「取り付け時は正常に動作していました」と言う。
結果:原因特定のための診断費用と、修理費用がすべて自己負担。
ケースC:エアバッグ警告灯が点灯
カーナビを取り付けた直後、エアバッグ警告灯が点灯した。
原因は?
- 取り付け時に配線を触ったことが原因?
- 部品が車両の電装系に干渉している?
- たまたまタイミングが重なっただけで、別の原因?
→ 判断できません。
施工店は「部品の問題かもしれません」と言い、 販売店は「取り付けの問題では?」と言う。
結果:ディーラーで診断してもらうことに。診断費用と対応費用は自己負担。
後悔しないためにできること
「でも、トラブルなんてそうそう起きないだろう」
確かに、すべての持ち込み施工でトラブルが起きるわけではありません。
湯けむりガレージでも以前は持ち込み施工を受けていた時期がありました。
その時の経験を振り返ると、多くのケースで、何らかの追加対応が必要になっていました。
別に脅すつもりはありませんが、これが自動車という複雑な製品での現実です。
そこで、ネットで購入する前に、次の3つにチェックが入るか確認してみてください。
☐ 不具合が出たら、診断費用を自己負担してでも原因を確定させる
☐ 部品が原因なら、自分で全責任を負う
☐ 施工店に対しての修理費用はまず自分で立て替えて、販売店とは自分で交渉する
3つともチェックできるなら、リスクを理解した上での持ち込みです。
それも一つの選択だと思います。
ひとつでも「そこまでは…」と感じたなら、部品選定から取り付け・調整・アフターフォローまで、プロに一貫して任せる方が安心です。
まとめ|知った上で、あなたにとってベストな選択を
大切なことなので繰り返しになりますが、持ち込み施工における最大のリスクは、責任の所在が曖昧になること。そして、それを明確にする責任を、あなたが負うことです。
通常の取り付けでは、すべて一つの業者が責任を持ちます。
一方、持ち込み施工では、部品と施工が分離しているため、不具合が起きた時に「誰の責任か」が不明確になります。
そして、ここまで見てきたとおり、誰の責任か決められないまま宙に浮いた費用は、多くの場合、あなたが負担することになります。
しかも、この「明確にする責任」は、お金だけの話ではありません。
販売店への連絡も、症状の説明も、施工店との調整も、すべてあなたの生活時間の中でこなすことになります。
余計なお世話かもしれませんが…、仕事があって、人によっては家事も育児もあって、それだけで一日は十分に埋まっているはずです。
持ち込みを選んだ瞬間、その毎日に「責任の所在を明確にする」という仕事がもうひとつ足されるんです。
こうした持ち込みという選択は、よく調べて、賢く買い物ができる方ほどたどり着きやすいものです。
価格差は、調べれば見えます。
ただ、この時間の負担だけは、トラブルが起きるまで見えません。
「知らなかった」で後悔してほしくない。
この事実を知った上で、あなたにとってベストな選択をしてください。
なお、湯けむりガレージが持ち込み施工を原則お断りしている理由は、湯けむりガレージについてでお話ししています。
