持ち込み施工で曖昧になる「責任の所在」| カー用品取り付けのリスク



「同じ商品なら、ネットで安く買って取り付けだけプロに頼めばいい」

そう考えて持ち込み施工を選ぶ方は多いと思います。

でも、実際に取り付けてもらった後、もし不具合が起きたらどうなるでしょうか?

「これは誰の責任でしょうか?」

この問いに、実は明確な答えは存在しません。

「いやいや、当然施工店でしょ。」 と思っている方も多いかもしれませんが、

施工店側は「部品の問題だと思います」と言うかもしれません。 販売店側は「取り付けに問題があるのでは?」と言うかもしれません。

これ実はどちらも間違っていないし、どちらも正しくもないという状態です。

なぜなら、部品と施工が分かれている以上、原因の切り分けが非常に難しいからです。

持ち込み施工における最大の問題は、この 「責任の所在が曖昧になる」 ことなんです。


この記事でお伝えすること


まずはおさらい:通常の取り付けにおける責任の範囲

持ち込み施工の問題を理解するために、まずは「普通にディーラーやカー用品店で取り付けてもらう場合」の責任範囲を整理しておきましょう。

ディーラー・カー用品店が部品調達から取り付けまで行う場合

例えば、あなたがディーラーに「ドライブレコーダーを取り付けてほしい」と依頼したとします。

この場合、ディーラーは次のような責任を負います。

つまり、すべての責任がディーラー(またはカー用品店)にあるんです。

だから、あなたは安心して「お任せ」できます。

トラブルが起きても、連絡する窓口は一つ。 「部品の問題か、取り付けの問題か」を判断するのもお店の仕事です。

これが、通常の取り付けにおける「責任の所在が明確な状態」です。


持ち込み施工で曖昧になる責任

では、持ち込み施工ではどうなるでしょうか。

部品選択の責任は誰が?

あなたがネットでドライブレコーダーを購入し、施工店に持ち込んだとします。

「この製品が、あなたの車に適合するか」を確認したのは誰でしょうか?

責任の境界線が、すでに見えにくくなっています。

取り付け後に不具合が出た場合、原因は?

取り付け後、ドライブレコーダーが動かなかったとします。

原因は何でしょうか?

これを、あなたは判断できますか?

施工店は「部品の問題だと思います」と言うかもしれません。 ネット通販の販売店は「取り付けに問題があるのでは?」と言うかもしれません。

どちらが正しいのか、あなたには分かりません。

誰に連絡すればいいのか?

不具合が起きたとき、あなたは次のような状況に置かれます。

窓口が複数に分かれ、たらい回しになる可能性があります。

そして、原因を特定するための診断費用や再施工費用は、誰が負担するのでしょうか?


なぜ「責任の所在」が曖昧になるのか

部品と施工が別々の業者だから

通常の取り付けでは、部品調達も施工も同じ業者が行うため、誰が責任を持つかが明確です。

でも持ち込み施工では、

という形で、部品と施工が分離しています。

そのため、不具合が起きたとき、

を切り分けることが、非常に難しくなります。

なぜならば、あなたの持ち込んだ部品を土台として話が進んでいくからです。 つまり、持ち込みである以上、あなたにも責任がつきまといます。

それは、法律的な観点と、商習慣としての観点からも説明ができます。

持ち込んだ部品の責任は、原則としてあなたにある

結論から言うと、持ち込みである以上、少なからず責任はついてきます。

これは、法律的にも商習慣的にも同じです。

法律(民法636条)の考え方

民法第636条には、次のように書かれています。

請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(中略)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

難しい文章ですが、要点はこうです。

「お客様が部品を持ち込んだ場合、その部品が原因の不具合については施工店に責任を問えない。ただし、プロが『問題がある』と気づいていたのに黙っていた場合は、プロにも責任がある」

つまり、

という考え方です。

商習慣的にも、責任は分離する

通常の取引では、「部品選定」「適合確認」「取り付け」「動作確認」「保証」がすべてセットになっています。

これによって、部品と施工の両方について、一つの業者が責任を持つという構造が成り立っています。

でも持ち込み施工では、この前提が崩れています。

こうなると、商習慣上も「施工店が全責任を負う」という構造にはなりません。

実務的には、証明が難しい

たとえば、不具合が起きたとき、

これを後から証明するのは、非常に難しいです。

だからこそ、「誰の責任か」が曖昧なまま、自己負担になってしまうリスクがあるんです。


具体的なトラブルシナリオ

では、実際にどんなトラブルが起きるのか、具体例を見てみましょう。

ケースA:適合しなかった

ネットで購入したカーナビが、車種には適合していたが、グレードによって配線が異なり、そのままでは取り付けられなかった。

誰の責任?

→ 明確な答えがありません。

結果:追加の配線加工が必要になり、工賃が追加で発生。部品は返品できず、自己負担。

ケースB:取り付け3ヶ月後にナビが故障

取り付けから3ヶ月後、カーナビが突然動かなくなった。

原因は?

→ 判断できません。

販売店は「初期不良期間は過ぎています」と言い、 施工店は「取り付け時は正常に動作していました」と言う。

結果:原因特定のための診断費用と、修理費用がすべて自己負担。

ケースC:エアバッグ警告灯が点灯

カーナビを取り付けた直後、エアバッグ警告灯が点灯した。

原因は?

→ 判断できません。

施工店は「部品の問題かもしれません」と言い、 販売店は「取り付けの問題では?」と言う。

結果:ディーラーで診断してもらうことに。診断費用と対応費用は自己負担。


まとめ:知った上で、あなたにとってベストな選択を

持ち込み施工における最大のリスクは、「誰が対応すべきか分かりにくくなる」ことです。

通常の取り付けでは、すべて一つの業者が責任を持ちます。

でも持ち込み施工では、部品と施工が分離しているため、不具合が起きた時に「誰の責任か」が不明確になります。

法律(民法636条)も、お客様とプロの双方を守るように書かれていますが、実務的には「誰が責任を負うのか」を証明するのは非常に難しいです。

「知らなかった」で後悔してほしくない。

この事実を知った上で、あなたにとってベストな選択をしてください。


後悔しないためのチェックリスト

ここまで読んで、こう思われた方もいるかもしれません。

「でも、トラブルなんてそうそう起きないだろう」

確かに、すべての持ち込み施工でトラブルが起きるわけではありません。

私も以前は持ち込み施工を受けていた時期がありました。 その時の経験を振り返ると、多くのケースで、何らかの追加対応が必要になっていたんです。

別に脅すつもりはありません。これが自動車という複雑な製品での現実なんです。

ただ、ここで本当に大事なのがリスクマネジメント

トラブルが「起きるか・起きないか」ではなく、 起きた時にどのような行動をとるかを決めておくことが重要なんです。

まず確認してほしい3つの問い

この線引きが曖昧だと、お客様も私たちも困ることになります。

そのうえで、どちらを選ぶか

大事なのは、「知らなかった」で後悔しないことです。

もし、次のように考えるなら、プロに一貫して任せる方が安心です。


湯けむりガレージのスタンス

湯けむりガレージでは以下の2つの理由から持ち込み施工を原則お断りしています。

理由①:責任を取れない仕事は、受けられない

プロとして作業を行なっておきながら、お客様に「それは私の責任ではありません」と言わなければならない状況は、望んでいませんが、持ち込み施工では、その状況が高い確率で起きてしまいます。

理由②:リスク管理のための時間と労力を、音の調整に使いたい

持ち込み施工を受けるとなると、

など、「守りの作業」に多くの時間を割くことになります。

その時間があるなら、音の測定や調整、お客様との相談に使いたい。

リスク管理ではなく、音づくりに集中したい。

それが、湯けむりガレージの選択です。


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