カー用品のネット通販はなぜ安い?専門店との価格差の正体

ネット通販が安いのには、理由があります。

「サポートのコスト」と「責任を負うためのコスト」をカットしているからです。

主には、以下のコストです。

  • 適合確認や相談への対応
  • 取り付け後のトラブル対応
  • 初期不良かどうかの診断対応
  • 初期不良確定の際のメーカーとの交渉

「じゃあ、確認だけプロにしてもらってネットで買えば最強では?」と思った方、鋭いですが、実は大きな落とし穴があります。

価格の中身の話から、「プロに確認してネットで買う」が実は解決にならない理由まで、順番にご説明します。

いま、「商品価格」は2種類

ネット通販の安さの理由をご案内する前にお伝えしておきたいのが商品価格の種類です。

現在の商品価格は、大きく2つの方式に分かれています。

「メーカー希望小売価格」と「オープン価格」です。

メーカー希望小売価格とオープン価格の違い。メーカー希望小売価格はメーカーが参考価格を示す方式、オープン価格は参考価格を示さない方式。実際の販売価格を決めるのはどちらも販売店

※念のため補足ですが、メーカー直販についてはこの記事では触れず、メーカーと販売店は異なるものとして読み進めてください。

なお、メーカー希望小売価格に強制力がないのは、メーカーが販売店に価格を守らせること(再販売価格の拘束)を法律が禁止しているためです。
公正取引委員会|再販売価格維持行為

価格設定「基準」不在の現在

強制力がないとはいえ、かつてメーカー希望小売価格は「定価」と呼ばれ、事実上の販売価格として通用していました。値引きの話も、この「定価」が出発点でした。

ところが、メーカーが参考価格を示すことをいいことに、販売店が「定価の50%OFF!」みたいな売り方をするようになります。

実態とかけ離れた参考価格はかえって消費者を惑わせると問題になり、メーカーは希望小売価格をつけること自体をやめていきました。

こうして現在、家電量販店に並ぶ製品は、ほとんどがオープン価格になっています。

そして、基準だった「定価」が消えたことで、価格の決まり方そのものも変わりました。

以前(定価の時代)「基準(定価)からいくら引くか?」という「引き算」の発想
現在(オープン価格)「仕入れ原価にいくら乗せるか?」という「足し算」の発想

ちなみに、この定価をめぐるメーカーと販売店のやりとり、調べてみると松下電器とダイエーの30年にわたる攻防など、なかなか面白い歴史がありました。

事実関係をきちんと知りたい方は、「定価」はなぜ通用しなくなったのか?メーカーと安売り店の攻防史にまとめましたので、よかったらご覧ください。

サポートは商品価格に含まれるのか

商品価格の種類がわかったところで、そもそもの話ですが「商品価格」の内訳について考えてみたことはありますか。

多くの方が「No」だと思います。
それもそのはず。「商品価格」という名前なので、商品以外の費用が含まれているかどうかなんて考えたことがない。という感じかもしれません。

とはいえ、現実はどうでしょうか。

販売店で店員の方にアドバイスをいただき、購入した場合、何かわからないことが出てきたら、そのお店に電話してサポートを受けていたりしませんか。

ほかにも、何かトラブルがあった際にも、そのお店に窓口として対応してもらっていないでしょうか。

ここで直接メーカーに電話する方は少ないと思いますし、メーカーに問い合わせても「まずは販売店にご相談ください」と案内されたりします。

では、そのサポートのお金は、どこから出ているのでしょうか。
そう、商品価格からです。

そういう考え方から、湯けむりガレージでは、商品価格は、「商品そのもの」に「サポートの活動コスト」が上乗せされたものと捉えて、メーカー希望小売価格で販売しています

詳しくは→湯けむりガレージについて

カーオーディオは、質問の多い世界

カーオーディオの製品は、専門性がかなり高いです。
そもそも説明書は、わかる人向けに書かれてあるので、一般的な家電の説明書とは訳が違います。

さらにいえば、海外製品だと、その説明書自体があっさりしていて、そもそも書いていないなどは普通にあります。

だから、質問は買う前から始まります。

「これって私の車に付きますか?」
「これ付けて大丈夫ですか?」

まず前提として。アフターパーツは、純正の後付け用品とは異なり、「取り付けできることが確約されていない商品」のほうが圧倒的に多いです。

つまり「うまく加工すれば付けられます」「取り付けのアタッチメントは自分で用意してね」という世界です。

話はそれますが
この「加工前提」の世界に目をつけたのが、国産メーカーのアルパインです。

売れ筋の車種に絞って専用設計する戦略に舵を切り、アルファード、ヴェルファイア用の車種専用ナビ「ビッグX」をヒットさせると、同じ方式をスピーカーにも展開。

ツイーターを車種専用の内装パネルごと交換する取り付けキットまで体系化しました。

それまで「うまく加工してね」だった場所を、アタッチメント側を車種別に作り込むことでポン付け化した、というわけです。

おかげでいまは、売れ筋車種ならトレードインスピーカーはツイーターまでポン付けできる時代になっています。

話を戻します。

より高音質を求めると、おのずと海外製品や、ポン付けでは済まない技術力や専門性が必要な製品に向かうことになります。

だから「付くかどうか」の判断自体が、専門店の仕事なんです。

そして「大丈夫ですよ」と答えた瞬間から、その言葉には責任が生まれます。責任を引き受けるのは、タダではできません。

買った後も、質問は続きます。

「使い方がわからない」
「操作していたら何かおかしくなった」
「これってできますか?」

カーオーディオは、これが本当に多いです。

こうした対応には、人が動き、時間がかかります。

こういった、カーオーディオ専門店のサポート、活動にかかるコストには、どのようなものがあるか、まとめました。

ビフォアサポート(購入前)に発生する活動

  • お乗りのお車、グレードまで含めた適合確認
  • お客様の目的や予算に合った商品選定
  • 専門知識に基づく相談対応
  • 取り付け方法の事前検討
  • 取り付けのために必要な部品(アタッチメント)の確認

アフターサポート(購入後)に発生する活動

  • 取り付け時の不具合対応
  • 初期不良時の交換・返品対応
  • メーカーとの交渉代行
  • 継続的なメンテナンスサポート

これらの活動すべてに人が動き、時間をかけて対応するため、人件費や設備費、ノウハウの蓄積コストなどが発生します。

つまり、価格構造は

商品の原価 + ビフォア・アフターサポートにかかる活動コスト

となります。

ちなみに、サポートの活動にかかるコストを価格に織り込むというこの考え方には、経営会計の世界で「活動基準原価計算(ABC: Activity-Based Costing)」という名前がついています。

それでは、インターネット通販と見比べてみましょう。

専門店とインターネット通販の違い

専門店インターネット通販(多くの場合)
ビフォアサポート
型式単位の適合確認△(適合表の掲載まで)
お乗りのお車・グレードに合うかの個別確認×(自分で調べて判断)
目的や予算に合った商品選定×
専門知識に基づく相談対応×
取り付け方法の事前検討△(限定的)
アフターサポート
取り付け時の不具合対応×
初期不良時の交換・返品対応△(商品のみ/手続きは自己責任)
メーカーとの交渉代行×
継続的なメンテナンスサポート×
価格原価 + サービス費用原価 + わずかなマージンのみ
実質的なリスク負担専門店側購入者(お客様)側

インターネット通販の価格構造

包み隠さずいうと、インターネット通販で販売されている商品の中には、仕入れ原価に近い価格(仕入れ原価+数百円〜数千円程度)で提供されているものも少なくありません。

特に、普及価格帯の商品では、こうした傾向が見られます。

この価格構造を、先ほどのABC(活動基準原価計算)の考え方で見てみると、ビフォア・アフターサポートに関わる活動の多くをカットしているからこそ成り立つ価格だと見て取れます。大量販売・薄利多売のビジネスモデルで、サポートにかかるコストを最小化しているわけです。

※もちろん、すべてのインターネット通販がこの限りではありません。

ネット通販にも配送や梱包など、別の費用はかかっていますが、専門店の価格には、それに加えて技術的な判断や相談対応といった「人が動く」コストが含まれています。

「プロに確認して、ネットで買う」で解決しない理由

本記事の冒頭で触れた部分です。

「じゃあ、適合確認や商品選びの相談だけプロにお願いして、商品そのものは安いネット通販で買えばいいのでは?」

この方法、実は見落とされがちな問題があります。

責任は「仕入れた人」に付いてくる

そもそも普段の買い物で、「責任」という言葉がお客様に向かってくること、ありますでしょうか?

まずないと思います。

それは、仕入れたお店が商品の責任を引き受けていて、そのコストが価格に含まれているからです。

ところが、ご自身がネット通販で購入した瞬間、この前提が崩れます。
商品にまつわる責任の所在は、「誰が仕入れたか」で決まるからです。

専門店が仕入れた商品であれば、初期不良への対応も、取り付けてみたら不具合が出たときの原因切り分けも、メーカーとの交渉も、仕入れた専門店が窓口となって対応します。

先ほどの表にあった「アフターサポート」は、お店が仕入れの責任を負っているからこそ提供できるものです。

一方、ご自身がネット通販で購入した場合は、望むにしろ望まないにしろ、結果的にあなた自身が「仕入れ業者」の立場になります

そのため、事前にプロへ相談したかどうかは関係なく、

初期不良の切り分けも
販売店やメーカーとの交渉も
返品の手続きも

すべて購入者であるあなたの仕事になります。

なぜならば、商品の売買契約は、あなたと通販業者との間で結ばれているからです。

「なんだそれ。一方的に決めつけすぎてないか?作業した人が責任を負うのが当たり前じゃないの?」と思われたかもしれません。

もちろん、作業した人が責任を負う場合もあります。ただし、それは取り付け作業そのものに対して責任を負うということであり、商品側の責任とは切り離して考える必要があります。

ややこしいですよね。

インターネットが普及するまで商品は、施工店と販売店を兼ねている事業者から購入することが一般的だったので、責任の所在が明らかでした。

しかし、現在では、施工店と販売店が異なる状況が生まれ、それと同時に責任の所在も曖昧になっています。

なお、商品の不具合の責任を負うのは、「売買契約の売主(ここでは通販業者)」と定められています(民法562条〜)。

施工店は、売買契約の外にいるため、商品の責任を問う相手にはならない。というわけです。

あなたは2本の契約を結んでいる。「売買契約」の枠の中にいるのはあなたと通販業者(売主)で、商品の責任はこの契約の中。「取り付けの依頼」の枠の中にいるのはあなたと施工店で、作業の責任はこの契約の中。施工店は売買契約の枠の外にいるため、商品の責任を問う相手は売主(通販業者)になる

繰り返しになりますが、取り付け作業そのもののミスは施工店の責任です。

ただ、持ち込み施工の場合、不具合の原因が作業なのか商品なのか、その切り分けが非常に難しくなります。

そして、その切り分け、つまり責任の所在を明確にする責任も、あなたが負うことになります。

この「責任の所在」について詳しくは→持ち込み施工で曖昧になる「責任の所在」

費用と責任はトレードオフ

優先したいこと買い方責任(トラブル対応・交渉)
費用を最優先したいネット通販で買うご自身で引き受ける(仕入れ業者の立場)
プロに責任を負ってほしいプロから買うプロが引き受ける。そのコストが価格に含まれる

ご覧のように、「費用を抑えたい」と「プロに責任を負ってほしい」は、両立しにくいのです。

つまり「プロに確認してネットで買う」という方法は、結局商品に関する責任の部分はご自身で引き受けることとイコールです。

もちろん、それを理解した上で選ぶのであれば、ひとつの選択肢ではあります。

なお、実際のトラブルについて詳しくは→持ち込み施工で実際に起こるトラブル

まとめ|ネット通販と専門店では、「売っている中身」が異なっている

その中身とは

「商品だけなのか」

「サポート及び責任もなのか」

の違いです。

専門店の商品には、「人が動くコスト」と「責任を引き受けるコスト」が含まれています。

費用を最優先するならネット通販。責任ごと任せたいならプロから。

ただし、「安く買って、責任はプロに」は成立しませんので、そこだけご注意を。

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