持ち込み施工で実際に起こるトラブル|施工前・施工中・施工後のリスク一覧
このページでは、持ち込み施工の現場で実際に起こりうる不具合を、施工前〜施工中〜施工後の流れに沿ってご紹介します。
それぞれの不具合について、
- 誰が責任を負うのか
- お客様が実際に被る損害は何か
を明確にしながら解説していきます。
普段の買い物で、「責任」という言葉がお客様に向かってくることは、まずないと思います。それは本来、売る側と施工する側が引き受けているものだからです。
ところが、持ち込み施工を選ばれた場合、ご本人はそのつもりではないにせよ、「お客様でありながら、同時に仕入れ業者としての責任も負う」という、いわば二重構造の立場に置かれることになります。
なぜそのような立場になってしまうのかという仕組みの部分は、カー用品の持ち込み取り付けで曖昧になる「責任の所在」で詳しく解説しています。
施工前〜施工中の問題|責任の所在は比較的明確
まず、施工前〜施工中に起こる問題についてです。
こちらは比較的シンプルで、責任の所在がはっきりしています。
大前提として、持ち込み施工における責任の切り分けは次のようになります。
施工店が負う責任
- お客様から渡されたパーツは、すでに適合確認が済んでいるという前提で受け取ります
- その前提のもと、取り付け作業そのものに対して責任を負います
仕入れ業者(=お客様ご自身)が負う責任
- そのパーツがお客様の車両に適合しているかどうかを確認します
- 適合性を確認したうえで、パーツを仕入れます
このような責任の切り分けを前提として、実際にどのような問題が起こり得るのかを見ていきましょう。
【施工前】輸送中の破損・事故
不具合の内容
施工店に直送したパーツが、配送中の事故で破損していた。
責任の所在
- パーツ販売店と運送会社間の問題
- 交渉窓口はお客様ご自身になります
- 施工店は一切関与していないため、責任を負いません
お客様が被る損害
- 販売店・運送会社との交渉の手間 → 平日昼間に電話対応が必要なことも
- 施工のキャンセル → 予約していた日程が無駄になる
- 納期の大幅な遅れ → 代替品の手配・再配送に1週間以上かかることも
- 精神的ストレス → 誰も分からない=誰かが嘘をついているのではと疑心暗鬼になる可能性も
【施工前〜施工中】車両との適合性確認不足
不具合の内容
ネットで購入したパーツが、実際にはお客様の車両に適合しなかった。
責任の所在
- 仕入れ業者(=お客様ご自身)
- パーツの適合確認は、「仕入れる側」が請け負うのが普通です
- 施工店は適合確認に一切関与していないため、責任を負いません
お客様が被る損害
- 開封済みのため返品不可 → パーツ代全額が無駄に
- 正しいパーツの買い直し → 部品代が2倍かかる
- 脱着工賃の発生 → 作業自体は発生しているため、取り付けできなくても工賃請求される
- 時間のロス → 正しい部品が届くまで、再度予約・再入庫が必要
【施工中】必要な付属パーツの準備不足
不具合の内容
取り付けに必須のアタッチメント・配線キットなどが欠品していた。
責任の所在
- 仕入れ業者(=お客様ご自身)
- 「仕入れる側」が「何が必要か」を確認して仕入れます
- 施工店は必要な部品確認に一切関与していないため、責任を負いません
お客様が被る損害
- 作業の中断 → その日は取り付けできず、お車を預けたまま部品待ちに
- お車が使えない期間の発生 → 通勤・生活に支障が出る
- 保管料の発生 → 工場に長期間預ける場合、別途保管料を請求されることも
- レンタカー代 → 代車を借りる場合、その費用も自己負担
このように、施工前〜施工中の段階では、「誰の責任か」はある程度はっきりしています。
ただし、それは同時に「お客様ご自身が、仕入れ業者としての責任を負っている」ということでもあります。
施工後の問題|責任の所在が非常に曖昧になる
ここからは、施工後の問題についてです。持ち込み施工の最も厄介な部分です。
施工後の不具合は、パーツそのもの・施工・車両との相性のどれが原因なのかを特定すること自体が難しく、責任の所在が曖昧になります。
そして、曖昧になった所在を明確にする責任は、お客様ご自身に回ってきます。
ここでは、実際の不具合パターンごとに「何が起きて、どんな損害を被るのか」を見ていきます。
【施工後】パーツの初期不良
不具合の内容
取り付け作業中、または取り付け直後に、パーツが正常に動作しないことが判明。
責任の所在
- 非常に曖昧になります
- パーツ不良なのか施工ミスなのか、その切り分けを求められるのはお客様ご自身です
お客様が被る損害
- 原因調査費用 → 施工店が「パーツ不良か施工ミスか」を切り分ける作業自体に費用が発生することも
- メーカー修理・交換待ち → 修理に1週間以上、お車が工場から出せない
- 再施工の工賃 → パーツ交換は無償でも、再取り付けの工賃は全額お客様負担
- 複数窓口との交渉 → 販売店・施工店・メーカーそれぞれとやり取りが必要
- 精神的ストレス → 「誰が悪いのか」という不毛な押し付け合いに巻き込まれる
【施工後】スペック選定ミス(相性問題)
不具合の内容
取り付けはできたが、アンプとスピーカーのインピーダンスインピーダンス(Ω)交流に対する抵抗のようなもの。スピーカーは周波数で変動する。用語集で詳しく見る →(抵抗値)が合っておらず、音が歪む、または機器が破損した。
責任の所在
- 複雑になります
- 建前上は仕入れ業者(=お客様ご自身)の責任ですが、
- 「専門店なら、取り付け時に気づいて教えてくれるべきでは?」という期待とのズレが生じる
- 施工店側も「言われた通りに付けただけ」という立場を取れてしまう
お客様が被る損害
- 機器の破損(焼損) → スピーカーやアンプ自体が壊れ、買い直しが必要に
- 再選定・再購入 → 正しいスペックの製品を買い直し
- 再施工の工賃 → また一から取り付け直すため、工賃も再発生
- 音質の不満 → そもそも期待した音が出ない
- 「プロなら教えてほしかった」という後悔 → サービスを受ける立場として期待していたことと、仕入れ責任者として扱われる現実とのギャップ
【施工後】粗悪品・模造品による不具合
不具合の内容
ネット通販で購入した激安品が、実は粗悪品や模造品で、ノイズが発生したり、すぐに壊れた。
責任の所在
- 非常に複雑になります
- パーツ販売店に一義的な責任がありますが、海外業者などで連絡が取れないケースも
- 「その販売店を選んだ」のは仕入れ業者(=お客様ご自身)
- 施工店は「持ち込まれたパーツを取り付けた」だけなので、品質には関与しません
- しかし「プロなら見抜いてほしかった」という期待とのズレが生じる
お客様が被る損害
- 販売店との交渉難航 → 海外業者の場合、日本語が通じない・返品不可のケースも
- 泣き寝入りの可能性 → 連絡が取れず、返金も交換もできないまま終わることも
- 買い直し → 正規品を改めて購入
- 再施工の工賃 → 取り外し・取り付け直しの工賃が再発生
- 他機器への悪影響 → ノイズが原因で、ラジオ・地デジ・スマートキーなど他の車載機器にも不具合が波及することも
【施工後】ノイズ対策不足による他機器への干渉
不具合の内容
取り付け後、ラジオに雑音が入る、地デジが映らない、スマートキーが反応しにくいなどの症状が出た。
責任の所在
- 最も曖昧になるパターンです
- パーツ自体のノイズ対策不足なのか
- 取り付け時の配線処理配線処理電源・信号・スピーカー線のルーティング、圧着/ハンダ、保護などの総称。用語集で詳しく見る →に問題があったのか
- 車両側の特性とパーツの相性なのか
- 原因の特定自体が非常に難しい
お客様が被る損害
- 原因調査費用 → ノイズ源の特定作業に、別途診断費用が発生
- 対策部品の追加購入 → ノイズフィルターなど、追加のパーツ購入が必要に
- 再施工・追加施工の工賃 → 配線の引き直しなど、追加作業の工賃
- 車両の安全性への不安 → スマートキーが効かないなど、重要機能への影響
- 責任の押し付け合いに巻き込まれる → 施工店・パーツ販売店の間で、「誰が悪いのか」が決まらない
【施工後】新品でも起こる初期不良
不具合の内容
新品で購入したにもかかわらず、使用開始後すぐに故障した。
責任の所在
- 建前上は明確ですが、実際には複雑になります
- パーツ販売店・メーカーに責任がありますが、持ち込み施工の場合、施工店は窓口になりません
- お客様ご自身が販売店・メーカーと直接交渉することになり、そこで逆に施工側の問題を疑われることもあります
お客様が被る損害
- メーカー修理・交換待ち → 修理に1〜2週間、お車が使えない
- 販売店・メーカーとの交渉 → 平日昼間の電話対応、メールでのやり取り
- 施工店との調整 → 「施工に問題がなかったこと」を証明する書類を求められることも
- 再施工の工賃 → 交換後の取り付け直しは、全額お客様負担
- レンタカー代 → 長期間お車が使えない場合、代車費用も自己負担
「新品で買ったものだから、初期不良なんて起こらないはず」
そう思われる方も多いかもしれません。
ただ、実際の現場で色々な製品に触れていると、「新品=トラブルゼロ」とは言い切れない時代になっていると感じます。
とくに、以下のような製品だと、初期不良に当たるかどうかが「運次第」という状況も珍しくありません。
- 設計・検証の期間が十分に取れていない製品
- 抜き取り検査すら十分に行わず、「不良品が出たら返品対応で済ませる」前提で出荷している製品
なぜ新品でも初期不良が起こりうるのか、その背景や、最近の製品づくりの実情については、別ページで詳しくお伝えしています。
「新品だから安心なのでは?」と思っていた方は、一度目を通してみてください。
→ 「新品だから大丈夫」が通用しない時代に。自動車の電装品を選ぶ前に知っておきたいこと
「プロに確認だけしてもらって、購入は自分で」という考え方について
ここまで読んで、もしかしたら
「じゃあ、プロに適合確認だけお願いして、その上で商品の購入は自分でインターネットで買って、取り付けだけプロにお願いすればいいんじゃないか」
こんな考えが浮かんだ方もいらっしゃるかもしれません。一見、これなら問題が解決するように思えます。
ただ、実際にはこの方法でもあなたがパーツを購入する限り、根本的な問題は解決していません。
なぜなら、「誰が仕入れたか」によって責任の所在が変わるからです。
この点について詳しく知りたい方は、
をご覧ください。
専門店とネット通販の価格差の中身や、「費用を抑えたい」と「責任を負ってほしい」が両立しにくい理由について、詳しくお伝えしています。
まとめ|損害の一覧が示していること
ここまで、施工前から施工後まで、実際に起こる不具合とその損害を見てきました。
あらためて、各パターンの「お客様が被る損害」の欄だけを見返してみてください。部品の買い直し、工賃の再発生、平日昼間の電話対応、お車が使えない期間、保管料やレンタカー代。責任の所在がはっきりしている段階でも、曖昧になる段階でも、そこに並んでいるのはすべてお客様自身の出費と手間です。
これが、冒頭でお伝えした「二重構造」の正体です。部品を自分で仕入れるということは、価格差というメリットと一緒に、こうした損害を引き受ける立場も背負い込むということなんです。
それを理解した上で選ぶのであれば、持ち込みも一つの選択だと思います。ただ、この一覧を見て「そこまでは考えていなかった」と感じた方は、部品選びから任せる方法も含めて、一度考え直してみてください。
