#17 収益の柱を確保せよ|理想だけでは、家族は養えない

前回、事業計画書を作成する中で「なぜその売上を出せるのか?」という根拠が必要だとお伝えしました。
今回は、その具体的な数字と、私がどうやって「収益の柱」を確保しようとしたのかをお話しします。
「健康で文化的な最低限度の生活」は、いくらか?
事業計画書を作る上で、まず考えなければならないのは、
「いくら稼げば、生活できるのか?」
という現実です。
私はここで、一つの基準を設けることにしました。
それが、生活保護の金額です。
日本国憲法第25条第1項には、こう書かれています。
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 — 日本国憲法 https://laws.e-gov.go.jp/law/321CONSTITUTION#Mp-Ch_3-At_25
では、この「健康で文化的な最低限度の生活」は、一体いくらで保証されるのか?
当時の私の家族構成(大人2人、小学生1人、中学生1人)で、秋田県鹿角市で生活保護を受けた場合、その金額は約21万5,050円でした。
(参考:https://fuse-law.jp/cgi-bin/welfare_money.cgi)
ただし、この金額は医療費が一切かからず、自動車も所有しない前提です。
一方、私が当時受け取っていた地域おこし協力隊の給料は、
- 給料:16万6,000円
- 家賃補助:5万円(福利厚生として 実費支給なし)
- 自動車貸与(任意保険料金)・ガソリン代:1万円程度(福利厚生として 実費支給なし)
合計で約22万円弱。
自動車関連の1万円を引くと、約21万円。
生活保護の金額とほぼ一致します。
生活保護を受けないと言う前提でいくと、自動車は所有できますので、22万円と医療費の金額(+α)も生活費に含める必要があり、それを考えると、あと+ 30,000円は欲しいところ。
つまり、私が個人事業主として生活していくためには、最低でも月25万円は必要なことがわかりました。
損益分岐点を計算する
次に考えたのは、「月25万円を稼ぐには、何件の作業が必要か?」という問題です。
そのために、まず1件あたりの工賃を調べました。
地元のカー用品店を何店舗か回り、工賃一覧表を全て書き写したのです。
それらの平均値を出したところ、1件あたり約8,000円という数字が出ました。
では、月25万円を稼ぐには何件必要か?
25万円 ÷ 8,000円 = 31.25件
つまり、月32件の作業をこなせば、生活できるという計算です。
ちなみに、ホンダディーラーで働いていた頃、私は月60件ほどの新車整備をこなしていました。
だから、月32件という数字は、決して不可能ではないと思いました。
問題は、その32件をどうやって確保するかです。
カーオーディオだけでは食えない
正直に言います。
秋田でカーオーディオの需要がどれくらいあるのか、私には分かりません。あるかもしれないし、ないかもしれない。
だからもちろん市場調査(とにかく知り合いに全数ヒアリング)をするんですけれども、市場調査をしたところで、それが本当かどうかはやってみないとわからない。
周りにカーオーディオ専門店がないということは、需要が少ないからかもしれないとも思っていました。
だから私は、事業計画書において、カーオーディオの収益を基盤収益として計上しないと決めました。
カーオーディオ事業をやりたいと言って、融資を受けようとしているのにもかかわらず…。
なぜならば、融資担当者が納得できるかどうかを考えたからです。
「秋田でカーオーディオの需要があります!」と言っても、融資担当者がそれを信じる根拠がありません。実際にヒアリングした結果を見せたところでそれはあくまで、自分都合でよく見せようとしたヒアリング結果でしかないと言うふうに思われる可能性も捨てきれません。
むしろ、「現実が見えていない人」と思われるリスクの方が高い。
だから、カーオーディオは「プラスアルファの収益」として考え、別の確実な収益源で基盤を固める必要がありました。
それが、Seibii(出張整備サービス)です。
Seibiiとの出会い
Seibiiを知ったのは、ある電装品の修理依頼がきっかけでした。
その電装品(NEOTOKYO ドライブレコーダー)はインターネット専売品で、販売店がなく、対面窓口もありませんでした。
調べてみると、「Seibiiという出張整備サービスに依頼する方法もありますよ」という案内があったのです。
その時、初めてSeibiiというサービスを知りました。
調べてみると、Seibiiの登録パートナー整備士は全員2級自動車整備士であること、そして1時間あたり9,000円以上のレバレートを保証していることが分かりました。(2023年時点)
これは、整備士の地位向上を目的としている証拠でもありました。
ただし、2級自動車整備士なら誰でもパートナー整備士になれるわけではありません。
パートナー整備士の合格率は約20%の狭き門。
それでも、やらないのに諦めるという選択肢はなかったのです。
ダメならダメで次の方法を考えよう。そう思いながら、まずは登録のためのオンライン説明会を申し込みました。
説明会の後にアンケートがあり、私はそこで自分をしっかりとアピール。
Seibiiにかける思い。整備士としての覚悟。そして、家族と地域のために働きたいという願い。
全てを書きました。
私自身、出張整備を事業の柱にしようと考えていたので、「なんとしてもやりきるんだ。」という想いがありました。
いきなり自分で集客し、自分でブランディングをするよりも、Seibiiの看板を使って基盤収益を作る方が確実だという経営判断です。
基盤収益10割をSeibiiで狙う
事業計画書には、こう記載しました。
基盤収益:Seibii 10割
プラスアルファ:カーオーディオ
つまり、月25万円はSeibiiで稼ぐ。カーオーディオはその上乗せ。
その根拠はというと、Seibii本部に「月これくらい稼ぎたい」と伝えたところ、「出張が増えますが、できる限り手配します」と言っていただけたからです。
実際、東北は整備士が足りておらず、法人からのドライブレコーダー取り付け依頼も多いとのことでした。
「本当に助かる」と言われたので、Seibiiで基盤収益を稼ぐことは可能だと確信しました。
当時はドライブレコーダーが流行り始めた頃で、法人対応の案件も多かったのです。
工賃設定の苦悩
ただ、工賃設定には悩みました。
カー用品店の工賃を調べて分かったのは、実際にかかる時間に対して、工賃が安すぎるということでした。
この金額で仕事を受けたら、品質に妥協せざるを得ない。
しかし、それをやってしまったら、個人事業主としての意味がなくなると思いました。
値段で勝負したら、大企業には絶対に勝てません。
だから、私はカー用品店と同じか、それ以上の金額をもらうと決めました。
では、どうやって高い金額でも満足してもらえるのか?
それは、価値を提供することでした。
- DIY施工のような配線処理はしない
- 配線を丸見えにしない
- しっかりと固定し、異音が出ないようにする
- 見えないところまで徹底的にこだわる
こうした「見えない部分」にこそ、価値があると考えました。
では、この「見えない価値」を、まだ見ぬ顧客にどうやって伝えるのか?
私が出した答えは、ウェブサイトでした。
この時の考え方が、今の「湯けむりガレージ」のウェブサイトの土台になっています。
家族の反応
妻には、この計画を全て話しました。
「まずやってみればいいんじゃない。とにかく生活費を稼いでくれれば何でもいい。」
基本的には賛成してくれました。
ただ、心配していたのは、長距離運転による居眠り運転事故でした。
「事故だけはしないでね。」
何度も言われました。そういう経験が過去にあるから…。
また、出張が続くと家を離れることになるので、子供2人の送迎はどうするのか、という問題もありました。
Seibiiでは、事前に「この日は作業できます」という日を登録し、そこに仕事を当ててもらえるシステムだったので、その辺は調整が効くと説明しました。
さらに、出張の日数自体を減らす工夫も考えました。
それは、1件だけで出張するのではなく、3件、4件を同時に作業するように段取ることです。
この点もSeibiiに相談したところ、「むしろそのほうが助かります」と言っていただけました。
なぜなら、Seibiiの法人案件では、一定以上の距離を移動する場合、交通費を法人側に負担していただける仕組みだったからです。(2023年当時)
つまり、法人側としても、1回の出張でまとめて作業してほしい。
私としても、出張日数を減らして、家族の負担を減らしたい。
お互いにとって利がある。
これは追い風だと思いました。
理想と現実の両立
カーオーディオで食っていく。
もちろん、それができれば本望です。
しかし、夢だけで家族は養えません。
秋田という土地で、どれだけの需要があるのか。
月に何件の依頼があれば、生活が成り立つのか。
私は、もう一つの「収益の柱」を立てる必要がありました。
それが、Seibiiへの登録だったのです。
理想と現実。
その両方を見据えながら、私は事業計画書を完成させました。
次回は、この計画を持って、地域のディーラーへ挨拶回りに行った話をします。
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