機材よりまず土台|カーオーディオの「3重苦」

このページでは、カーオーディオが抱える3つの構造的ハンデと、なぜ土台整備が先なのかについて解説していきます。

カーオーディオの3重苦

カーオーディオには、ホームオーディオ(家庭用オーディオ)にはない3つの構造的ハンデがあります。
この構造的ハンデによって、機材本来の性能を発揮できていないことが多いです。

その1|スピーカーの箱がドア

スピーカーは、設計された箱(エンクロージャー)に入れて初めて本来の性能を発揮します。

ところが自動車のスピーカーはドアに取り付けられており、そのドアはスピーカーボックスとして設計されたものではありません。
整備性を優先するため穴だらけで、しかも共振する薄い鉄板で構成されています。

同じ穴でも、ホームオーディオのスピーカーの穴は低音を増強するための設計です。
一方、ドアの穴(サービスホール)は整備のためのもので、音響的にはむしろ不利な構造です。

そのため、スピーカーの背面から出た音がドア内部で回り込み、表の音を打ち消してしまいます。

これが、どんなスピーカーを入れても思ったほど変わらない原因のひとつです。

その2|電源の制約

自動車の電源は12Vのバッテリーであり、エンジンを回して発電するオルタネーター(発電機)、ライトやエアコンなどの電装品が同じ回路上に同居しています。

そのため、電装品のノイズが音声信号に乗りやすく、電圧の変動も常に起きています。

ホームオーディオのように、安定した電源を簡単にコンセントから取れる環境とは根本的に異なっています。

その3|真ん中に座れない部屋

ホームオーディオでは、左右のスピーカーと等距離に座るのが基本ですが、運転席は車室の中央にはなく、左右のスピーカーまでの距離が異なっています。

反射面の素材もバラバラで、ガラス、樹脂、布、金属が入り混じっており、ホームオーディオの常識がそのまま通用しない空間です。

この3つは、カーオーディオが最初から持っているハンデで、ホームオーディオより不利な条件からのスタートになります。

だから「まず土台」になる

ここで、湯けむりガレージの考え方の軸になっている「音の仕上がりの掛け算」を紹介します。

音の仕上がり = 土台 × 機材 × 技術

  • 土台 → 3重苦にどこまで手を打ったか(=やったかどうか)
  • 機材 → スピーカー、DSPDSPEQ、クロス、TAなどを統合的に制御する音声処理。用語集で詳しく見る →(デジタル・シグナル・プロセッサー)、アンプなどの部品
  • 技術 → 取り付け、配線、デッドニングデッドニング主にドア等で、(1)振動・共振を抑える(制振)、(2)背面波の回り込みや空気漏れを減らす(気密化/遮蔽)、(3)反射や箱鳴り要因を整える(吸音等)ことで、スピーカーが仕事しやすい環境を作る施工。用語集で詳しく見る →といった作業を、どれだけ原理原則に従って正確に行なったか

ポイントは、これが「足し算」ではなく「掛け算」なことです。

湯けむりガレージが考える仕上がりの掛け算。音の仕上がりは、土台×機材×技術の掛け算で決まる。数字はイメージだが、機材だけに投資すると1×10×1で仕上がりは10。バランスよく整えると4×4×4で仕上がりは64。投じた合計は同じ12でも、掛け算では差が開く。足し算ではなく掛け算なので、どれかひとつがゼロに近いと全体が沈む

たとえば、20万円のスピーカーを入れても、ドアが穴だらけのままで、音響調整もしていなければ、土台の項が足を引っ張ります。掛け算の構造上、機材だけに投資しても仕上がりは伸びません。

一方で、機材自体はエントリークラスでも、土台と技術の項が高ければ、仕上がりは伸びてきます。

「機材の価格と音質は、必ずしも比例しない」と言われるのは、この構造的な理由があるからです。

土台整備は3つの工程でできている

3重苦が3つある以上、対処する工程も3つあります。 そして、それぞれの工程には「必要になるタイミング」があり、すべてを一度にやる必要はありません。

3重苦対処する工程必要になるタイミング
その1|スピーカーの箱がドアデッドニング最初の一歩(ほぼすべての自動車で施工できる)
その2|電源の制約電源の引き直し外部アンプ・DSPを導入する段階
その3|真ん中に座れない音響調整DSPを導入した後

価格の付け方は専門店ごとに異なるため、金額は湯けむりガレージで行う場合を例に出します。 以下、着手する順に「何をするのか」と「おおよその金額」を見ていきます。

工程1|デッドニング(ドアへの対処)

デッドニングは、ドアをスピーカーの箱(エンクロージャー)として作り込む作業です。 家庭用オーディオなら最初から付いてくる「箱」を、自動車では後から作ることになります。

湯けむりガレージで行う場合、100,000円〜です。

金額の中身は、ほぼすべてが施工の手間と技術です。 内張りを外し、ブチルを剥がし、アウターパネルの共振ポイントを調べ、最小限の範囲を制振制振(せいしん)振動を減らす(鳴きを抑える)目的の処理。用語集で詳しく見る →材で抑える。 その後サービスホールを塞ぎ、ドアハンドルが正常に機能するかチェックしつつ密閉度合いを確認する。

ドア2枚分をムラなく仕上げるには、時間と経験が必要です。

加えて湯けむりガレージでは、スピーカー単体の測定資料と施工写真の納品まで含めています。

デッドニングはほぼすべての自動車で施工でき、アンプやDSPがなくても効果がそのまま出ます。

工程2|電源の引き直し(電源への対処)

電源の引き直しは、バッテリーからオーディオ専用の電源線を直接引く作業です(バッ直と呼ばれます)。 家庭でいえば、オーディオ専用コンセントを増設する感覚です。

ただ、この工程には、大事な前提があります。

引いた電源の先につなぐのは、外部アンプやDSPなので、それらを導入する予定がまだないなら、電源の引き直しを急ぐ必要はありません。 アンプ・DSPを導入する段階で、セットで行えば十分です。

湯けむりガレージで行う場合、工賃50,000円〜に配線キット約19,000円(4ゲージ。例:オーディオテクニカ TPK-400R)が加わります。 4ゲージの太さで引いておけば、後から容量不足で引き直しになることはまず起こらないと見ています。

ちなみに、バッテリーがある場所によって作業内容は変化します。

バッテリーがトランクにある自動車なら、配線がほぼ室内で完結するため、比較的シンプルです。

バッテリーがエンジンルームにある自動車では、純正の配線をかわしながら太い配線を室内へ引き込む作業が発生します。
車外から室内へ引き込む部分には防水処理が必要ですし、その配線を撤去する際の安全面まで考えて施工を行います。

ほかにも、バッ直電源が必要な機材の数によっては、ヒューズブロックやアースグランド(アース)電気的な基準点。自動車はボディが大きな共通グランドになりやすい。用語集で詳しく見る →ブロックが必要になりますので、追加で約1万円程度必要です。

全て込み込みだと79,000円〜 ほどになります。

工程3|音響調整(空間への対処)

左右の距離差を補正する音響調整は、DSPを導入して初めてできる工程です。 湯けむりガレージで行う場合、調整費用は150,000円〜です(DSP本体などの機材代は別途)。

調整だけでこの金額になる理由は2つあります。

まず一つは、1回で終わる作業ではないからです。
そのため、この費用には、初回の調整(10時間)に加えて、1年間で4回の再調整料が含まれています。

4回の理由としては、

  • スピーカーはエージング(鳴らし込み)で音が変わっていくため、落ち着いた頃に調整し直す必要があります
  • 音の好みはオーナーごとに違います。乗り込むうちに見えてくる「もう少しこうしたい」を反映する回が必要です
  • 季節によって、音の響き方は変わります

この3つを追いかけた結果、1年間で4回の調整がちょうど収まる回数です。

もうひとつの理由は、調整が感覚だけの作業ではないことです。

DSPの操作自体は、アプリを触れば誰でもできますが、「どこを、どれだけ、なぜ動かすか」の判断には音響の理論と測定機材、そして経験が必要です。

感覚だけで触ると、大抵は音を崩してしまいますし、調整にばかり時間が取られ、純粋に音を楽しむこともできなくなってしまいます。

ただ、あらかじめ断っておくと、DSPがなかった時代から、カーオーディオはいい音を追求してきました。

まずドアを整えるだけでも、音は確実に変わります。
音響調整は、土台ができた後に純粋にプラスオンできるステップとして考えれば十分です。

工程は3つ、実行のタイミングは2段階

ここまで工程を3つに分けてきましたが、実際にやるタイミングで見ると2段階に畳まれます。 工程2と工程3は、DSP導入のときにセットになるからです。DSPやアンプを入れるなら電源の引き直しは必須で、入れたDSPは調整して初めて意味を持ちます。

  • 第1段階:デッドニング
  • 第2段階:DSP導入(電源の引き直しと音響調整もセットで)

これはカーオーディオの基礎知識で推奨している順番(デッドニング→DSP+外部アンプ)と同じです。

費用のほとんどは、部品ではなく施工

3つの工程を並べると、部品らしい部品は、電源の引き直しの配線キット約2万円くらいです。

デッドニングの10万円も、電源引き直しの工賃5万円も、音響調整の15万円も、その中身は施工・測定・調整にかかる手間と技術の費用です。

土台整備にお金がかかるのは、高い部品を使うからではありません。構造的ハンデに対処する作業が、それだけの手間と技術を要するからです。

また、ここに車種ごとの追加工数が乗ると、金額はさらに膨らみます。

まとめ

カーオーディオには、ホームオーディオにない3つの構造的ハンデ(3重苦)があります。
その3重苦は、機材を足すことでは解決せず、土台整備でしか改善できません。

土台整備の金額は、そのほとんどが部品代ではなく、構造的ハンデに対処する手間と技術の費用です。

音の仕上がりは、土台×機材×技術の掛け算。

だから予算は、機材より先に、まず土台に。

それが、湯けむりガレージのおすすめです。

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