【最終章まとめ】783日後に事業承継を辞退するワイ。 引き継ぐ(後継者)側から見た事業承継失敗体験談

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時系列でおさらい
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令和2年7月 出会い

地域おこし協力隊として着任後3か月経ったところでした。ここで提案を受け「やります。」とお伝えしました。妻にも話をして、後日一緒に挨拶に行きました。立ちっぱなしで約3時間、お店の話を一方的に聞かされました。ここで嫌な顔をするのかしないのか試されてるのかな?と思いました。

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令和2年8月~11月 定期訪問

継ぐ気があるところを示そうと、顔を見せに行ってました。(就業時間外です。)行くたびに、2時間近く同じ話をされました。またもや立ったままです。もしかして話した内容忘れてる?いや、俺の事忘れてる?いや、毎回試されてる?と思いながらも行き続けました。まずは冬を経験してから。というのもここで言われました。

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令和2年12月~翌3月 訪問なし。

地域おこし協力隊の方で、いろいろと精神的に参っており、訪問する余力がありませんでした。

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令和3年4月 改めて事業承継の意思を伝える。

このころから精神的にもやや回復し、話にあった冬も難なく越せたので、改めて「やります。」と伝えに行きました。だいぶ心配していました。「他のやつに継がせようと考えた」とも言われました。

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令和3年5月~9月 定期訪問するうちに現代表から「仕込みを教えてやる。」とのお言葉が。

とはいえ、仕込みを教えてもらえる時間は、月~金の8時~18時でした。地域おこし協力隊の就業時間とダダ被りです。(規定として、協力隊の就業時間中に自身の定住活動は行えません。)

自治体に相談しました。同時に、事業承継の意思があることもはっきりと伝えました。結果、10月から任用条件を変更していただくことで、週に1日、終日修行できる時間を確保できました。

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令和3年10月~翌5月 板挟みに耐える。修行と就業、苦行の日々。

和4年3月頃になると、一人でもある程度の数をこなせるようになってきました。ただ、現代表からは、「時間を見つけて1つでも2つでも多く作りに来ないといけない。」と言われる事が多くなりました。

地域おこし協力隊の就業時間内に事業承継活動(定住活動)は行えないというルールと、週1以上に来いと言われることがつらかった日々でした。

どちらの立場も理解しているので、耐えるしかなかった日々を過ごしました。

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令和4年6月 本格的に修行を始める時期について言及がある。

体的に言えば、「協力隊の任期満了時期である令和5年4月よりも、時期を早めて毎日、終日来てくれるといいんだけどなあ。でも、そうもいかないよなあ。」というものでした。

そこで私は、任期満了を待たず退任も可能だと伝えて、現代表の希望していたタイミングである、令和4年10月から、本格的に修行ができないかどうか考え、令和4年9月末で協力隊を退任することを決意しました。

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令和4年6月~8月 協力隊として退任準備と、事業承継準備の同時進行。

現代表の言う本格的な修行=事業承継ではありませんでした。※便宜上6月被っています。

しかし、状況的に経営権を譲渡して頂かないことには本格的な修行は不可能なことから、商工会や、事業承継引継ぎ支援センターと4者協議のうえ、令和4年9月30日をもって現代表は廃業。私が令和4年10月1日付けで、起業(事業承継)という形で合意に至りました。

今思うと、ここから歯車が狂い始めたように思います。

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令和4年9月 事業譲渡契約書調印式目前に辞退を告げる。
目次

辞退した理由

今まで言っていた事と違うことを言い出して、信用できなくなったのが一番大きな理由かもしれません。

私の思う事業承継って、お互いを信用できてこそなんじゃないのかなって。どんなにすてきなお店であろうが、どんなに良いビジネスモデルであろうが、土台にお互いに対する「信用」と「尊敬」があるか否かというか…。

というわけで、具体的な例を挙げながらお伝えしていきます。

承継するメリットが実際には実現できそうになく感じました。

現代表からは…
  1. 県外から買いに来てくれるほど美味しく、他にはマネできない個性ある商品を作っている。
  2. この仕事だけで、一家を養っていけるだけの稼ぎがある。(マイホームも購入できた。)
  3. 売切れたら終わり。営業時間いっぱいまでお店を開けておくことはほぼない。(家族経営の利点)
  4. 時間の使い方が自由なので、家族との時間が持てる。
  5. 借金無し。
  6. 俺ができたんだから誰でもできる。簡単。
  7. 経営者が変わっても、商品が売れるのは間違いない。あとは真面目にやるだけ。

最初は以上のような話から、「跡継ぎにならないか?」と提案していただきました。

お店の情報として…
代表

個人事業主として菓子製造業を営む。
・営業時間は10:00~18:00
・売切れ次第営業終了。
定休日は日曜日
・主に現代表一人でやりくりしている。
・仕込み時のみ、奥様と2人で行っている。
仕込み時以外は、奥様は基本お店にいない。
 よって、接客は現代表のみで行う。
・将来競合相手となりえるため、従業員は雇わない。
家族以外に商品のレシピは知られていない。
・娘と、息子がいるらしいが、お店を引継ぐ気はないらしい。
・なお、娘、息子はすでに成人して社会人。

提案を受けて私が思ったメリット

私がメリットだと思ったこと
  • この仕事だけで家族が養える。
  • この稼ぎを元に、自分が興味ある新しい事業にもチャレンジできそう。
  • 妻は作家活動を続けられる。
  • 子供たちの土日の学校行事に参加できる。
  • 平日も子供たちとの時間がつくれる。
  • 地域の行事にも参加できる。

実際、いつお店を休むのかも自分次第なので、現代表は、家族でディスニーランドへ旅行に行ったりしたこともあると誇らしげに言われていました。

私の思う一番のメリットは、正直、「稼ぎ」です。
この仕事だけで家族が養えて、家も建てられるという響きは魅力的でした。借金もない。

時間の使い方が自由なら、仕事の段取りも自分次第。それなら、妻は作家活動を続けられそうです。

はたまた、新しい事業を展開していくことも夢ではなさそうでした。

とはいえ、まずはきちんとその味と名前を継ぐ事。

ただ、実際に1年以上修業していると、いろんなことが分かってきました。

稼ぎはそこまで良いとは言えないようでした。

正直なところ、これはある程度覚悟していました。過去の確定申告書類を見ると、コロナ禍以前の6年間には、売上が下がっており、現代表夫婦が暮らす分にはいいが、私たちのように育ち盛りの息子2人を養うには、もう少し売り上げを伸ばす工夫が必要だと感じました。

借金は本当になかったので、そこは安心しました。

ただ、家を建てられていたのは本当ですし、お子さま2人もそのお店の稼ぎで育てられていたので、工夫次第で売り上げを伸ばすことは可能だと思えました。

それもこれも、良い商品だからこそではあります。

次です。

時間の使い方は自由とは言い難い感じを受けました。

ここでいう時間の使い方というのは、お店をいつ休みにするか?というものです。

時間の使い方が自由とは思えない理由は他にもありますが、具体的過ぎてお伝えできません。すみません。

現在のお店の定休日は日曜日なので、子供の行事があった場合は、基本的に参加できると思っていました。

お店の情報として…
代表

・個人事業主として菓子製造業を営む。
・営業時間は10:00~18:00。
・売切れ次第営業終了。
・定休日は日曜日。
・主に現代表一人でやりくりしている。
・仕込み時のみ、奥様と2人で行っている。
・仕込み時以外は、奥様は基本お店にいない。
・よって、接客は現代表のみで行う。
・将来競合相手となりえるため、従業員は雇わない。
・家族以外に商品のレシピは知られていない。
・娘、息子がいるらしいが、お店を引継ぐ気はないらしい。
・娘、息子はすでに成人している。

でも、実際にはそうではありませんでした。

どういうことかというと、定休日も普通に営業していました。

聞いていたところだと、定休日は、予約があればお店を開けると言っていましたが、予約票に書かれていなくても、営業していました。つまり、ほぼ無休状態でした。

では休みっていつ取るのか確認すると、

元旦と、気が向いた時。

でした。

そして、その定休日の売り上げが、なんと月の売上の3分の1を占めていたので、日曜日は定休日とは言ってられない感じでした。

コロコロ変わる現代表の教え

この辺りは前章までをご確認いただいていれば分かるかと思います。

5者間の読み合わせの時にでさえはっきりと言葉にしない代表。

現代表もきっと、いろんな想いあって、そうなっていることと思います。

ただ、結果的に周りに迷惑をかけてしまっていることをご理解いただけていない様子でしたし、それをきちんと伝えられる人物も周りには誰もいない状態のようでした。

ということから、最後は不信感しか残らなかった感じです。

  • 最初に言ってた話と違うこと
  • 言葉通りに受け止めてはいけない事

主にはこの2つが大きかったです。

言葉通りに受け取ってはいけないというのは、割と普通のことだと思いますが、事業承継は信頼関係が重要だと思っています。

それなら、言葉にしてしっかりと伝える必要があるのではないか。と思っています。

そもそも、最初に聞いた話と違う時点で、承継する話が進むことはないと考えてもよかったかもしれません。

事業承継後も元経営者が退かないという事例はよくあるようだった。

これは、中小企業庁における、事業承継対策をしなかった場合の失敗事例においても、1番目に扱われている位、メジャーな失敗事例の様です。「事業承継トラブルあるある」と言えるかもしれません。

実際に他のサイトでも、元経営者が退かないことが原因によるものとして、事業承継が失敗したとの記事がありました。

株式会社 アールイー経営HP内 「嶋田利広ブログ|事業承継のコンサルティング」より
> 後継者がメンタルを壊し退職した理由

どうすればよかったのか? 

早めに判断するべきでした。今回の場合は。ですが。

ただ、承継時期がカチっと決まり、期日が近づいてきて初めて分かったことがあまりにも多く、具体的な期限が迫っていない中で、判断できる材料が乏しかったのもまた事実でした。

事業承継の難しいところ 信頼関係が出来上がってからじゃないと何も進まない。

それには何か月かかるか分かりません。

その期間が終わった後、初めて確定申告書類を見せてもらえます。
そこからジャッジできるようになります。

その時にダメだったら、正直時間の無駄ですよね。
当時に戻ってやり直せたらと今でも思います。

そこまで時間かけてなにも残らない可能性があるのなら、最初から自分で起業した方が良いかもしれません。

今回の承継活動を通じて私はそう思いました。

私は事業承継はオススメしません。
なぜなら、労力は起業と同じだと感じたからです。

仮に検討している人がいらっしゃるようでしたら、次項以降の部分を意識してみてほしいです。

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